今年に入りもう1ヶ月が経とうとしています。
月日というものは本当に早いものです。
毎日の当たり前の生活を有難いなと感じながら、家族や職場スタッフに支えてもらっています。
最近は「看護学」という言葉の意味をよく考えるようになりました。20代の頃は「看護」といえば注射や点滴がいかに上手にできるかばかりを考え、それが看護師の仕事だと思う時期もありました。
私はAさんに出会ったことでよりいっそう看護学を考えるきっかけになりました。Aさんはリンパ浮腫があり、毎日リンパマッサージのケアで訪問看護を希望。浮腫が軽減したことで活動範囲も広くなり、外食や大好きな温泉へよく行かれるようになりました。知識が豊富でお喋りが大好きなAさん。マッサージ中には「痛快だ!」とよく言われ、会話と笑い声が広がる空間がそこにありました。
次第に歩行も困難な状態へ。
肌の温もりを感じながら、みるみるうちに細くなるAさんの足。会話をすることさえきつい時期へ。マッサージをしながら、私の気持ちが手の温もりをとおしてAさんへ届いて欲しいと願いながら・・・。
マッサージを終えて肌から手が離れると「あー気持ちがよかったよ。サンキュー」の一言。気持ちがAさんに伝わっていると思える瞬間でした。
「また来ますね・・・」と耳元で話しかけ、この握手が最期になるかも、なりませんようにと心の中で願いながら両手をぎゅっと握り、Aさんからもぎゅっと力強い握手とともに「またね。ありがとう。さようなら・・・」と細い声でかえってきたのが私との最後でした。
そのAさんも初孫が誕生し、初孫が自宅に帰ってきた夕方に寝たままの状態で初孫の重みをお腹の上で感じ、その2日後に永眠されました。
私たちは薬や点滴などだけに頼らず、その人の肌に触れること、温もりを与えれることこそが、薬や点滴以上に元気になる源を与えているように思います。
“手の温もりから相手に伝わる気持ち”
非言語的コミュニケーションの1つですが、それを大切にして、看護学を身につけ、患者さんたちに寄り添うことが私たちのすべき本当のケアだと思います。
Aさんと会えなくなることは淋しいですが、「さようなら」という短い言葉が一生の別れになることがあるということ・・・。
だからこそ、一秒一秒を大切に生きていこうと思います。
訪問看護ステーションつばさ 高井良美由紀
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ever (土曜日, 26 1月 2019 22:47)
教科書や経験から得る知識や技術はもちろん大切だけど、相手を思いやり苦しみを和らげてあげたいと思いながら行うケアは、看護師としてとても大事なことだと思います。そのような看護師になれるように感性を磨き、努力していきたいと思います。