がん患者の家族になって

先日、私の妹からショッキングな電話がありました。

「姉ちゃん(叔母)が乳がんで抗がん剤の治療をするんだって」と。

 

叔母は、私の母の妹です。

私にとってはとても大切で、大好きな叔母です。

その叔母ががんだなんて・・・。

 

乳がんは生存率高いし、がんの種類によっては抗がん剤が良くきくはずよ」と妹をなだめながら、私の方が動揺していました。

妹からの情報をもとに、がんの種類や病期を自分でアセスメントしてみましたが、不安は募るばかりです。

いてもたってもいられなくなり、数日後、叔母の入院先に病状説明を受けに行きました。

 

医師からの説明は、私が想像していたよりもシビアな状況でした。

病状説明は慣れているはずなのに、この時は「よその人」のことを聞いている感じで頭に入ってきません。  

 

「がんの告知を受けた家族はみんなこんな思いなんだろうな・・・」

医療者、しかもがんを専門に勉強している私でも頭が真っ白です。いや、病態がわかるからこそ不安が募っていたのだと思います。

 

「本人にはどこまで話しますか」と医師は、バッドニュースを伝えるかどうか尋ねてきました。

叔母はやっと自分ががんだと認識し、前向きに化学療法を受ける気になりました。

叔母は「すべてを知りたい」と望んでいましたが、これ以上は伝えずがんという事実を伝えるだけで留めておくことにしました。

 

「治療の止め時はあんたが決めてね。苦しい思いはしたくない」と叔母がポツリ。

 

『代理意思決定』

叔母の言葉が重く、深くのしかかります。私に、姉ちゃんの人生なんか決めきれない・・・。

 

「姉ちゃん、大丈夫よ。とにかく治療頑張ろう」と叔母を励ましながらも、今後に対する不安にいたたまれなくなり叔母の顔を直視できませんでした。

 

家族は「第2の患者」と言われるくらい、患者同様のケアを受ける立場です。

がんの告知により、家族自身も危機や予期悲嘆、大きな不安を感じています。

 

自分が実際にがん患者の家族になって分かったこと。

「今まで本当に、家族の不安やつらさに向き合うことができていたか」

私はマニュアル通りの家族ケアしかできていなかった・・・。

このつらさをわかってくれる存在が一番必要だと感じるし、今後家族ケアを行う上での自分自身の課題です。

 

先日、一時退院した叔母から電話がありました。

「治療が効いてがんが小さくなりよるよ。姉ちゃん頑張るね」と。

 

今は、ただ叔母に元気になってほしいと願うばかりです。

 

訪問看護ステーションつばさ 吉武 由紀美