多発性骨髄腫で、「もう治療しても効果は期待できません」と医師から告げられたAさん。
「どうせ治らないのなら病院にいても仕方がない」と、不安がる奥様を説得して退院を決意されました。
病院のソーシャルワーカーさんから連絡を受け、まずは、ご自宅の中を確認させていただきました。「どこに介護ベッドを置く?」「ここの段差は越えられるかなぁ」・・・病院の理学療法士・作業療法士の方たちの助言も得ながら、皆でいろんな意見を出し合い、帰って来られた後に転倒等の事故を起こさないよう検討を重ねました。
そして、住環境が決まったら、次は退院に向けてのカンファレンスが開催されます。「どうすれば、Aさんが自宅で心配なく過ごすことができるのか」「どうすれば、自分らしい生活を送ることができるのか」、多職種でいろんな問題について話し合います。
そして、退院に向けての問題を、前向きにすべてクリアして退院して来られたAさん。
私がご自宅にお伺いした時には、ご自分のベッドの上で、にっこりと笑ってくださいました。そして、「とても元気にしているよ」、そうおっしゃってくださったのです。
Aさんは、ご自分の病気のことをご存じです。治らないという説明も、医師から受けてあります。でも、こんなに素敵な笑顔で過ごされているのです。
すべては、Aさんが在宅を選択されたことから始まっているのだと思います。
住み慣れたご自宅という環境が、Aさんに思いがけないパワーを与えているのでしょう。末期がんの方がご自宅に戻られると元気になるということは、よくあることです。Aさんの場合も、きっとそうなのでしょう。
いずれは病気が進行し、症状は悪化していくことでしょう。
でも、今は病状は安定し、大好きな場所で過ごすことができています。
そして、Aさんは、“今”を心から楽しんでおられます。
“たとえ不治の病に罹ったとしても、最後まで自分らしく生きる”・・・Aさんは、そんな生き方を選択されたのだと思います。そして、私たちはAさんを支援しているつもりが、実はAさんからいろんなことを学んでいるのだということに気付かされます。
“人は最後には死ぬのではなく、人は最後まで生き抜くのです“。
Aさんの人生は、まさにこの言葉そのものなのだと思います。
御井町ケアプランサービス
管理者 川津敦子
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